家紋とは何か? |
現代では冠婚葬祭以外で目にすることは稀になっています。
識字率の低かった時代は、誰もが一目で見分けられる家紋は、苗字以上に重要でした。家紋は社会の最小単位である家族・一族、つまり血縁者が共有するシンボルマークです。
独自性を表現する上で、苗字の次ぎに重要なものであり、われわれ日本人が繋いでゆくべき大切なバトンであり伝言だと思います。
自分という者に至るまでの人々が感じた喜びや悲しみ、苦しみ、すべてのものが凝集された結晶体といえるでしょう。 |
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家紋は替えても良いのか? |
家紋の利用については明確な規則はありません。使うも使わないも自由ですし、また変更することも自由です。
かつて古い家政制度の時代には、本家と分家を区別する上で多少の変更をほどこすという手法もありました。
ですから家紋の変更や保存について当会から強く指示するようなことはないし、そんな権利もありません。ただし原形を伝えていって欲しいという希望はあります。
私は自分に至るまで血を受け継いでくれた人々の人生を見つめてきた家紋を、簡単に替えてしまっていいのかという心情の部分が大切なのではないかとは思います。
また、家紋は苗字と同じような意識で生まれ、用いられてきたという歴史もあります。
家紋は先祖から託され、子孫に伝えるべき大切な伝言なのではないかと思います。
家紋の変更については良く考えて慎重に決めて頂きたいと思います。 |
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定紋と替紋って何? |
定紋は本紋、表紋とも云われ、替紋は裏紋、別紋、副紋、控紋などとも言われます。
武家では本紋のみというケースの方が稀で、ほとんどの家が複数の家紋を持っていました。
正式に用いられ、対外的にも苗字と同じように代名詞的に理解されるものが本紋です。
替紋については、用いる家ごとに使われるルールは違うようです。
もし家紋を替えたいと思う方は、新たに替紋を持つというのも一つの手段かも知れません。
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家紋の名称は決まってる?(トラブルを避けるために) |
家紋は一般に外側から内側に向かって読んでゆくというルールがあります。
下の画像を例とすれば、外側の黒→赤→青の順によんでゆきます。 |
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つまり「丸」→「隅立て井筒」→「木瓜」=「丸に隅立て井筒に木瓜」となります。
このルールに従えば紋形を実見しなくてもおおよその紋形を描けるという家紋業者による慣習的なものです。
特に明治時代以降は紋名の統一を図ろうという試みも積極的に進められました。
しかし、本来家紋とは誰の物なのかを突き詰めて考えてゆけば、紋名も出来得る限りその家に伝えられた名称に敬意を払うべきと思います。
場合によっては先祖が系図に紋名を明記している場合もあり、それはやはり一族にとって動かし難い歴史であるとも言えます。
ところが、いざ家に伝わる紋名を業者に伝えようとすると、うまく伝わらないと言うことがあります。それが原因で、せっかく依頼して出来上がった紋が、家に伝えられていたものと違った形になってしまったというトラブルが頻繁に起きています。
でもその名称が一般的に認知されないものであったとしても、幸い現代社会は写真を撮る機器も発達し、FAXなども普及しています。
そうした現代の機器を用いることによって家と業者の間で言葉による伝達間違いも少なくなっています。ですから家に伝わる紋名を大切に保存しつつ、紋形を間違わずに伝達する方法はあるのです。
それでも、もし紋服や墓石など、家紋を描くことが必要となり業者に依頼する場合は、慎重を期すようにしましょう。 |
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我が家の紋がどの紋帖にもない! |
紋帳や家紋辞典の類にはさまざまな家紋が数千ほど掲載されていますが、すべての家紋が掲載されているわけではありません。
未記載の家紋はその数倍の種類があると考えられています。ですから正しい紋形というものを紋帳に頼るということにも限界があります。
また近年は業者でもパソコン用のデジタルデータを用いることも多いようです。もしそのデータ集に収録されていない場合、家紋文化をよく理解していない業者の場合、お客様に家紋の変更、紋形の変更を求めることもあるようです。
家紋は一族にとっては苗字に等しいものですので、一家で能動的に変更を考える場合は別にして、外部からの要請で紋形を変更することは疑問と思います。
紋帖に記載されない家紋ほど意味深く、先祖の想いが濃密かつ明確に込められているとも思います。
やはり出来得る限りそのままの紋形を継承して欲しいと思います。 |
大宮家紋ファイルブックより「梅枝丸」
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女紋って何? |
西日本に多い習慣で、女系で伝えられてゆく家紋です。
女紋の風習も地域によって違うようですので、ここで決めつけた情報を書くことはできません。
一般的には嫁ぐ際に母が用いていた家紋をもらい、さらに娘が嫁ぐ時に伝えるという受け継ぎ方が多いようです。
しかしそれがすべてではありませんし、継承されない女紋もあります。
ですから、やはり家族、親族からどのように用いているかをよく聞いて継承するのがよいでしょう。
また東日本にはあまり見ることが出来ない風習ですから、地域を越えて婚姻する場合は女紋を理解できず、時にトラブルも発生することもあります。
とにかくお互いが生まれ育った土地のルールを話して理解し合うことが最善と思います。
詳しくは当会理事森本景一著の『女紋』をどうぞ。 |