家紋分布の特色


石川県の家紋は、わが国の家紋分布上、きわめて特色のある県である。木爪紋と蔦紋がきわめて多く、その両紋を合わせるとその使用比率は実に40%に達する。このことはわが国の家紋分布上、きわめて異例のことである。
このことは富山県にもいえるが、蔦紋はずっと少なくなる。木爪紋が北陸地方に多い理由については次のような諸説がある。


(1)越前国の豪族朝倉氏の影響
朝倉氏は日下部氏族の名族で、但馬国から越前国に移り、勢力を拡大した。日下部氏族の代表家紋は木爪紋であり、朝倉氏は三つ木爪紋が定紋であり、越前国に分布し、さらに北陸地方に広まった。


(2)伴氏の影響

万葉歌人とし知られる大伴家持が天平18年(746)、越中国赴任している。大伴氏は淳和天皇の時(823)、伴氏と改姓した。この伴氏の家紋が木爪紋であったことによる。


(3)一向宗門徒の影響

南北朝以降、越前、加賀、越中の諸国は一向宗の門徒の勢力が強大であった。現在もその門徒の子孫も多く、これらの家は多くが木爪紋を用いている。


また他県に比して少ない家紋がある。それは梅鉢紋、藤紋、鷹の羽紋、である。梅鉢紋は加賀藩主前田家の定紋であるので一般の人が使用を遠慮したものと思われる。